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2022年3月24日

労働契約

就業規則による不利益変更の原理原則

コロナ禍の影響を受けて業績不振による給与の引下げや、人手不足による労働時間の延長などにより、就業規則を変更しなければならないケースが増えています。 

給与の増額や福利厚生の拡充といった従業員にとって有利な変更であれば問題はありませんが、不利益となるような変更を行う場合は、慎重に進める必要があります。 

まず法律的の観点から、労働条件の不利益変更についてみていきます。 

労働基準法第1条では労働条件の引下げについて次のように規定されています。 

「この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。」 

労働基準法では、労働条件の引下げを認めていません。 

一方、労働契約法第8条では、「合意により労働条件を変更することができる」としていますので、不利益変更を行う場合は、合意が原則となります。 

通常、労働条件の不利益変更をする場合は、次の3つの方法があります。 

○労働協約を変更する 

○個別の合意をとる 

○就業規則を変更する 

「労働協約の変更」は労働組合との協議になりますので、労働組合が存在する会社では、まずこの方法を選択するかと思います。労働組合と協議を重ねて不利益変更について協定の締結を目指します。 

労働組合が存在しない会社では、「個別の合意」または「就業規則の変更」によります。 

後々のトラブルを回避するには「就業規則の変更」よりも「個別の合意」の方が、望ましいと言えます。 

しかし、従業員数が多い会社や営業所が全国に点在するような会社では、「個別の合意をとる」という方法は現実的には困難が予想されます。そのような場合は、「就業規則の変更」を選択せざるを得ません。 

「就業規則の変更」による不利益変更については、労働契約法第9条で次のように規定されています。 

「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。」と定められています。 

つまり、合意なくして不利益変更はできませんが、ただし書きに該当すれば、合意がなくても不利益変更が可能となります。 

では、ただし書きの第10条をみてみましょう。 

「変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」 

「変更後の就業規則が周知され」、かつ、「就業規則の変更に係る事情に照らして合理的」であることが条件となります。 

前者の「周知」は会社の努力次第で可能ですが、後者の「合理性」については、次のような要件を総合的に判断して、合理的であるかどうかが審査されます。 

・労働者の受ける不利益の程度 

・労働条件の変更の必要性 

・変更後の就業規則の内容の相当性 

・労働組合等との交渉の状況 

・その他の事情 

「合理性」の判断については、画一的な答えはありません。裁判例を参考にしながら、検討を重ねる必要があります。 

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